「空気人形」、監督是枝裕和、主演ペ・ドゥナ。原作は、業田良家原作の短編コミック「ゴーダ哲学堂 空気人形」だそうです。
ペ・ドゥナは僕の好きな女優です。「ほえる犬は噛まない」「復讐者に憐れみを」を観て、演技力のある素晴らしい女優だな、と思っていました。この「空気人形」では、主役の人形を演じていますが、期待通りの素晴らしい熱演でした。
「空気人形」は、秀夫のラブドールだが、「心」を持ってしまった。秀夫が働きに出ている間に動き出して、外を歩き回り、レンタルビデオ店で働く。やがて「空気人形」はビデオ店の先輩店員に恋心をいだく。「でも、私は人形。人間と同じように恋ができるのだろうか。」
心を持った「空気人形」はひとりぼっちだ。他に心を持った人形なんてない。そんな「空気人形」が出会う人間達は、あるときは彼女の心を慰め、あるときは彼女を孤独に追いやる。
私たちは皆、忙しく働き回っています。でもときには仕事から離れて、自分自身を見つめるときがあると思います。ちょうど時間が止まったように、周りから遮断されて、自分とは何だろうと考えてしまうときが。「空気人形」はしばしばそういうことを考えてしまうのです。誰でも愛されることを欲しています。でも愛してくれる人、甘えさせてくれる人がいるとは限りません。そういうときは孤独です。「空気人形」も孤独なのです。そして、それは私たち人間の孤独を象徴しているのだと思います。
僕にとっては、ぺ・ドゥナが出演しているだけで、観る価値がありますが、それだけではなく、良い映画に仕上がっていると思います。ただ、後半の秀夫と「空気人形」が話す場面あたりから、どうも話が不自然でおかしくなっていったように思います。「空気人形」に優しいストーリーにも出来たんじゃないかと思いました。製作者の意気込みが感じられるだけに、そのあたりの不自然さが残念でした。