おもこん

おもこんは「思いつくままにコンピュターの話し」の省略形です

ノルウェイの森


村上春樹の代表作「ノルウェイの森」を読みました。

 

この本を読む前は、これはノルウェイの奥深い森で、極限状況に追い込まれながらサバイバルを図る強靭な男のサスペンス物語だと勝手に想像してました。この本を読み始めると、37歳の「僕」がボーイング747に乗っているところから始まります。やっぱり、そうか。しかし、次の行に進むと、飛行機は「ハンブルク空港に着陸しようとしているところ」だと書いてあります。あれ、直行便じゃなくてドイツを経由するのかな?などと読み勧めていくと、「ノルウェイの森」は、ビートルズの曲だということが書かれていました。全然ノルウェイの森の話じゃなかったです。

 

この本は、「僕」の18年前の回想という形になっています。「僕」は20歳、大学の学生です。ある女性と愛し合いますが、事情があって彼女とは遠く離れてしまいます。彼女が暮らすのは、京都からバスで長い時間かかり、停留所から更にしばらくあるかなければならない、世間から隔離されたところでしたが、そこは今でも鮮明に思い出すことができる、「映画の象徴的なシーンのように」美しい場所でした。東京の大学に通う「僕」は彼女に逢いに行きますが、滞在できるのはほんの3日だけ。彼女のことを思いながら東京に戻らなければなりません。

東京では「僕」は寮生活。同居人や寮のエリート先輩、同じ演劇史IIの講義を取っている女子学生などとの交流が「僕」の中でその割合を増していきます。そして、離れて暮らす彼女も「僕」も時間とともに少しずつ変化していくのでした。

 

 

書かれている文章は平易で読みやすいです。この作品を読んでから、Wikipediaで「村上春樹」を検索してみました。その中では、「平易な文章と難解な物語」と彼の作品を評しています。僕は、ノルウェイの森が難解な物語だとは思いませんでした。確かに僕らの常識から考えたら、突拍子もないことを女の子が喋ったり、結構簡単に「僕」が女の子と寝ちゃったり、ありえないことが多いですけれど、小説なんだから現実離れした部分があっても全然構わないんじゃないかと思います。それに小説だから映像は何処にもないんだけれど、その文章からは印象的な風景が鮮やかに浮かんでくるのです。不思議なことです。僕は、この小説は絶対に映画になるな、と思いました。事実、今度映画化されるようですが。

 

もしも僕がもっと若い頃に読んでいたら、もっとこの作品の中にのめり込んでしまったでしょう。今は客観的な気持ちで読むことができますが、それでも読んだ後にいつまでも余韻が残ります。ちょうど美しい映画を観たあとのようでした。