おもこん

おもこんは「思いつくままにコンピュターの話し」の省略形です

玻璃の天



先ごろ直木賞を取った北村薫の「鷺と雪」と同じベッキーさんシリーズです。「鷺と雪」はシリーズ3作目、この「玻璃の天」は2作目です。

描かれている時代が戦前であり、かつ登場人物は華族をはじめとする上流階級であるため、我々の日常からは遠く、やや読みづらい面は否めないと思います。出てくる言葉も古めのものが多くなっています。

登場人物の中で最も魅力的なのは、何といってもベッキーさんこと別宮みつ子(べっくみつこ)でしょう。「私」花村英子の運転手でありながら、天才的頭脳の持ち主、かつ山のように膨大な量の知識の持ち主です。才女でありながらそれを鼻にかけることもなく、いつも影のように目立たなくしています。それは運転手という本人の社会的地位からというよりも、いわゆる「能ある鷹は爪を隠す」ことにより、他人との間に余計な摩擦を引き起こさぬためでしょう。そのベッキーさんがこの本の最後で、珍しく能動的な一面を見せます。それが何故かは、読んでからのお楽しみ。