おもこん

おもこんは「思いつくままにコンピュターの話し」の省略形です

蒲生邸事件


 

宮部みゆきの「蒲生邸事件」を読みました。僕が読んだのは、文庫本です。1冊なのですが、その長さは700ページ弱と、上下2冊にしてもよい長さです。

 

受験生、孝史は、負のオーラを持つ人物によって、昭和11年2月26日の東京にタイム・トリップしてしまう。信じられないことだが、この人物は時間軸を移動する特殊能力を持った「時間旅行者」であった。(我々には漢字の「時間旅行者」より、カタカナの「タイム・トラベラー」の方がしっくりくるかも)。降り立った場所は、元陸軍大将、蒲生憲之の屋敷の前庭だった。この日、歴史上の大事件2.26事件が勃発する。物語は2.26事件を背景に、蒲生邸で起こる大将の自決とその謎をめぐって展開される。タイム・トリップの要素が絡み、さらにちょっぴりロマンスの味付けも加わって、面白い小説に仕上がっていた。


このところ、宮部みゆきの本を続けて読んできました。彼女の本はこれが4冊目です。「理由」、「模倣犯」、「楽園」、そしてこの「蒲生邸事件」。前3作と違い、これはSF小説です。SFにもいろいろありますが、タイム・トリップとなると、時間的な前後関係が自由になるので、初めの方でどうということもない出来事が、後の方になってそれがタイム・トリップの仕業として、重要なポイントになって浮かび上がってくるという面白さを設定することができます。そのテクニックで際立つのは、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の3部作ですが、この「蒲生邸事件」にもそのテクニックが活用されています。時間というのは人間がコントロール出来ないものであるため、逆に魅力的な題材となっているのでしょう。


ちょっと長いですが、元々宮部みゆきの文章は長いのです。興味を持った方、頑張って読みましょう。それだけの価値はあると思います。