おもこん

おもこんは「思いつくままにコンピュターの話し」の省略形です

悩む力



姜尚中の「悩む力」を読みました。著者は東京大学大学院情報学環教授、専攻は政治学・政治思想史です。一般向けの本ですから、著者から見れば易しく噛み砕いて書かれたと思いますが、私には難しいところがありました。

悩みというのは、若い人の持つもので、人生を知り尽くした大人のものではない、と昔は言われていました。私自身は全くその逆で、若い頃は悩みを知らず、この頃になって正体の知れぬうつ状態に襲われることがあります。なぜかと考えてみると、若い頃と現在とが全く違った世の中になっているからなのです。経済体制からみると、どちらも同じ資本主義なのですが、その現れかたが全く違うのです。資本の無慈悲さが現在は極端に現れて、人間社会を脅かしています。派遣村に象徴される貧困の問題、それとは対照的に世界的規模で金融を操るマネーの傍若無人さ、そういう中でどの人も一種の「恐れ」を人生に対して感じているのではないでしょうか。本書はそういう現代社会が産んだ一冊ではないかと思います。もちろん、この本に万人の悩みに対する答えが書かれていて、それさえ読めば万事オーケーという訳ではありません。しかし、この本を読み終わってみると、悩みを持つ個々の人間に対する著者の温かい眼差しを感じることができます。そして、それが励ましにもなるのです。

今の自分に行き詰まりを感じているとしたら、本書を読んでみるのもひとつの手立てであると思います。そして、悩んでいくことが、悲しいことではなくて、ごくごく当たり前のことなんだ、と思えるようになると思います。