沈まぬ太陽、映画が封切られ好評のうちに上映中ですが、その原作は山崎豊子の小説です。この小説は、日本航空の社員であった故小倉寛太郎氏をモデルに、豊富な取材により、事実に基づきながら、フィクションを加えるという独特の方法によって書かれた作品です。
あらすじ
主人公、恩地元(おんちはじめ)は、本人の意に反して国民航空の組合委員長になってしまう。1年で辞めるつもりだったがやめられず2年に渡って委員長を務めた。その間労働者の待遇改善に腕を揮い、経営陣からは「アカ」とレッテルを貼られる「有名人」になった。組合つぶしに本腰を入れた会社は、恩地が委員長を退任すると、彼をパキスタンのカラチ支店に転勤させ、以後10年に渡って、テヘラン、ナイロビに追いやった。ところがこの不当人事が国会で取り上げられ、会社はやむを得ず恩地を国内に戻すことにした。その後、国民航空機の御巣鷹山墜落事故が発生、恩地は被害者の遺族係りとなる。会社の度重なる事故を重く見た政府は、会社の建て直しのために国見氏を会長に迎えた。国見は、分裂した労働組合の統合を航空機の絶対安全の条件と考え、そのために恩地を会長室部長に抜擢。会長の主導の下、恩地は会社の腐敗した第2組合OBの乱脈ぶりを調査するが、汚い裏金作りは会社のみでなく、政界にもはびこっていたのだった。
全5巻の長編小説です。アフリカ編、御巣鷹山編、会長室編、3つのそれぞれが違う個性を持っています。そして、それぞれが読み応えのある内容となっています。読みきるのは大変ですが、それだけのものはあると断言できます。
モデルの日本航空は、元々は国の特殊法人であり、日本の最高クラスの航空会社でした。その後民営化され、最近では経営再建が国会でも論議され、前途多難な状況です。
映画が上映中ということもあり、原作を読んでみるのもタイムリーで良いのではないでしょうか。