おもこん

おもこんは「思いつくままにコンピュターの話し」の省略形です

徒然Ruby(20)アプリ制作、インストール、テスト

2023/11/4追記

この記事の内容は古くなり、不適当な部分があります。 それはGitHubにあるCalcレポジトリが大幅に更新されたことによります。 そのため、下記の記事の代わりとして、GitHubページの徒然なるままにRuby -- アプリ制作、インストール、テストを参照してください。 ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

追記終わり

だいぶRubyの説明は進みましたから、このあたりでアプリを作る上でのポイントを述べたいと思います。 そのために、簡単な電卓プログラムを作り、GitHubにアップロードしたので、参考にしてください。

ファイル名で起動する方法

Rubyプログラムは

$ ruby ファイル名

で起動できるのですが、「ruby」と入力するのは煩わしいものです。 アプリ作成中は仕方がないとしても、完成したアプリはファイル名だけで起動したいですね。 それを実現するには、次の3行をファイル名の先頭に付けます。

#!/bin/sh
exec ruby -x "$0" "$@"
#!ruby

お呪いのようなものだと考えて、コピペしても構いません。 一応説明すると、まず1行目の#!はシバン(shebang)と呼ばれ、Unix系のOSではスクリプトを実行するプログラムを指定します。 この場合は「/bin/shによってこのファイルを実行する」のですから、シェルスクリプトとしての実行になります。 (/bin/bashではなく/bin/shとなっているのは、システムによってはbash以外のシェルが使われているかもしれないからです。 /bin/shはいろいろなシェル共通の呼び出しを提供します)。

2行目はシェルのコマンドで、execはそのシェルのプロセスで(新規プロセスを生成せずに)コマンドを実行する、というものです。 $0は起動されたファイル名(スクリプトファイルのファイル名)、$@は引数すべてを表します。 これから、もしこのスクリプトファイルのファイル名がcopyコマンドラインから次のように呼ばれたとすると、

copy file1 file2

まず、`/bin/sh/が起動され、2行目が実行されます。 2行目は

ruby -x copy file1 file2

コマンドラインから入力するのとほぼ同じことになります。

-xrubyのオプションで、「スクリプトを読み込む時に、`#!'で始まり, "ruby"という文字列を含む行までを読み飛ばす」というものです。 このことにより、最初の3行(#!/bin/sh〜#!ruby)が読み飛ばされ、4行目からrubyプログラムが実行されます。

Unix系OSのシバングは指定されたファイルを実行するので、

#!/usr/bin/ruby

でも良いように思われますが、これだとまずい場合もあります。 最もありそうなケースはrbenvでインストールしたrubyです。 rubyは$HOME/.rbenv以下に保存されるので、/usr/bin/rubyでは呼び出せません。 ($HOMEはユーザのホームディレクトリで、シェルからは~でも参照できます)。 このrubyはシェルから呼ぶことにより起動できるので、いったんシェルを起動してからrubyを起動する、という面倒なやり方が必要なのです。

コマンドへの引数の処理

Unix系OSではコマンドラインの構成が

コマンド 引数1 引数2 ・・・・

となっています。 Rubyでは、引数はARGVという配列に代入されます。 例えば

$ ruby_echo Hello world

とコマンドruby_echoが呼ばれたとき、

  • ARGV[0]には文字列"Hello"が代入されている
  • ARGV[1]には文字列"world"が代入されている

となります。 コマンドラインでは半角空白が引数の区切り文字になります。 区切り文字はARGVの中には入りません。 もし、空白も入れたいというときには、シングルクォートを用います。

$ruby_echo 'Hello world'

この場合はARGV[0]に文字列"Hello world"が代入されます。 引数は1個ということになります。

引数が何個あるかは配列の要素の数を返すメソッドsizeを使います。 ARGV.sizeが引数の数です。

ruby_echoのプログラムは簡単です。

#!/bin/sh
exec ruby -x "$0" "$@"
#!ruby

print ARGV.join(' '), "\n"

配列ARGVの各要素をjoinメソッドで繋げて文字列にします。 そのとき要素の区切りには、引数' '(半角空白)が用いられます。

インストーラ

作成例として、電卓プログラムcalc.rbを考えてみましょう。 このプログラムをコマンド名calcでインストールしたいとします。 その場合は$HOME/bin以下にファイルを置き、実行属性をつければよいのです。 FileUtilsモジュールを使うのが便利です。

require 'fileutils'
include FileUtils

def install
  cp "calc.rb", "#{Dir.home}/bin/calc"
  chmod 0755, "#{Dir.home}/bin/calc"
end
  • Dir.homeはユーザのホームディレクトリ($HOMEと同じ)を返すメソッド
  • cpはFileUtilsモジュールのメソッドで、ファイルをコピーする。
  • chmodはFileUtilsモジュールのメソッドでファイルの属性を指定する。 0755は8進整数を表す。このファイル属性は
    • 所有者は読み、書き、実行可
    • グループメンバーは読み、実行可で、書き込不可
    • その他ユーザは読み、実行可で、書き込不可 となる

実行属性をつけないと、ファイル名での起動はできません。 以上のようにインストールするとコマンドラインから

$ calc

で起動できるようになります。

アプリケーションを作るときには、インストーラも作っておきましょう。 また、アンインストーラインストーラに含め、オプションで切り替えても良い)も入れておくと良いです。 GitHubのCalcにはインストーラinstall.rbが添付されているので参考にしてください。

上記ではユーザ領域へのインストールでしたが、他のLinuxユーザにも使えるようにするには/usr/local/binにインストールします。 このときは管理者権限が必要なので、Ubuntuなどではsuコマンドを使います。 例えば

$ su ruby install.rb

のように起動します。

しかし、システム領域にインストールする必要はほとんどないと思います。

テスト

Rubyの標準のテスト・スートはminitestです。 名前はミニですが、結構大きいプログラムで、ドキュメントの量もあります。 minitestは別の記事で詳しく述べようと思いますが、ここではポイントを絞って書きたいと思います。

テストプログラムはRubyで書きます。 calcのテストは次のような感じになります。

require 'minitest/autorun'
require_relative 'lib_calc.rb'

class TestCalc < Minitest::Test
  def setup
    @calc = Calc.new
  end
  def teardown
  end

  def test_lex
    assert_equal [[func.to_sym,nil],[:'(',nil],[:id,"x"],[:')',nil]], @calc.lex("#{func}(x)")
... ... ...
... ... ...
  end

  def test_parse
    assert_output("100\n"){@calc.run("10*10")}
... ... ...
... ... ...
  end
end
  • minitesti/autorunをrequireで取り込む
  • テストしたいファイルlib_calc.rbはテストプログラムと同一ディレクトリにある。 取り込みにはrequire_relativeを使う
  • テスト用のクラス(ここではTestCalcという名前になっている)をMinitest::Testのサブクラスとして定義する
  • クラス内にはsetup、teardown、各テスト用のメソッドがある。
    • setup=>各テストの前に準備作業をするためのメソッド
    • teardown=>各テスト後の後始末をするためのメソッド
  • テスト用のメソッドにはtest_というプレフィックスをつける
  • assert_equial A, B は「Aが正常に機能したときの結果のオブジェクト」「Bが実行結果のオブジェクト」で、それらが一致すればテストを通過したことになり、一致しないとメッセージが出力される。 前者をexpected(期待される結果)、後者をactual(実際に行った結果)としてメッセージに書き込まれる
  • assert_output(A){ B }はAが標準出力への期待される出力、ブロックは実行メソッド。 メソッド(B)を実行した出力とAが一致すればテスト通過、一致しなければメッセージが出力される

テストがすべて通ると次のように出力されます。

$ ruby test.rb
Run options: --seed 43869

Running:

..

Finished in 0.006940s, 288.1909 runs/s, 8501.6308 assertions/s.
2 runs, 59 assertions, 0 failures, 0 errors, 0 skips
$ 

ドットはテスト項目、つまりTestCalcの各メソッドを表しています。 エラーがあると次のようなメッセージが出力されます。

Run options: --seed 34278

Running:

.F

Failure:
TestCalc#test_parse [test.rb:24]:
In stdout.
--- expected
+++ actual
@@ -1,2 +1,2 @@
-"100.0
+"100
 "



rails test test.rb:23



Finished in 0.010876s, 183.8891 runs/s, 4505.2836 assertions/s.
2 runs, 49 assertions, 1 failures, 0 errors, 0 skips

Failureはテストで失敗したことを示しています。 この他にErrorが出ることがありますが、それはプログラムを実行した時にエラーがあったことを意味しており、テストの結果ではありません。 上記ではexpectedがマイナスでactualがプラスで表されているので、「100.0」になることを期待してテストしたが、実際は「100」になったということを表しています。

すべての場合をテストするのは無理なので、典型的な例をテストすることになります。 プログラムのエラーは境界で起こりやすいです。 例えば正負が問題になるプログラムでは0が境界です。 「(変数)>= 0」を使わなければいけないのに「(変数)> 0」を使うといったバグは0以外ではフェイル(失敗)が起こりません。 ですから「境界をテストする」ことは非常に重要です。

GitHubのcalcにはtest.rbというテストプログラムがついているので参考にしてください。

なお、minitestを使うことを考えると、トップレベルだけでプログラムを作るのは得策ではありません。 仮にインスタンス変数をトップレベルで使うと、minitestからは参照できなくなります。 それは、テストのためのメソッドがTestCalcクラスで定義されているので、テスト時のインスタンスはトップレベルではないためです。 ですから、上の例のように、アプリの中でクラスを定義し、それをsetupメソッドでインスタンス生成して使うのが良い方法です。

Readme.md

簡単なドキュメントは付けておくべきです。 仮に公開しなくても、将来自分自身が見直す時に役に立ちます。 2週間別の仕事をすると、元の仕事内容を思い出すのに結構な時間がかかります。 そのときにドキュメントは役に立つでしょう。

GitHubに公開する場合はReadme.mdのようなファイル名をつけることになっています。 拡張子のmdはMarkdown形式を表します。 Markdownはhtmlと比べ格段に見やすく、書きやすいので勧められる形式です。 Markdownの説明は、次の記事を参考にしてください。

ただし、はてな記法などのはてな独自の記法はGitHubでは使えません(GitHubMarkdownはGFM)。

GitとGitHub

プログラムを公開するならばGitHubは無料で、機能が充実していて、有力な選択肢です。 GitHubとGitについては「はじめてのJekyll+GitHub Pages」の中に書かれていますので、以下を参考にしてください。

  • 第3章 GitHub pagesクイックスタート
  • 第7章 Gitの使い方
  • 第10章 GitをSSHで使う方法

が参考になります。 このうち第10章のSSHで使う方法は知らなくても大丈夫です。

今回はアプリ開発の実際を見てきましたが、いかがだったでしょうか。 簡単なアプリで良いのでぜひ作ってGitHubにあげてみてください。 作れば作るほどプログラミングのレベルは上がります。