おもこん

おもこんは「思いつくままにコンピュターの話し」の省略形です

Linuxは研究者・開発者に向いている

ありふれた古臭い話題かもしれませんが、LinuxWindowsの違いについて書いてみたいと思います。 ここでの「Linux」とはオペレーティング・システムの「Linuxカーネル」ではなくて、アプリケーションも含めた「Linuxディストリビューション」のことです。

Tux

日本では Windows を使ってる人が大半だと思いますし、特に企業においてはWindowsがほぼ100%に近いのではないかと思います。これは、LinuxCUI(文字入力によるユーザ・インターフェース、端末からのコマンド入力によるインターフェース)が主であったころに、WindowsGUI(グラフィック画面とマウスによるインターフェース)を取り入れ、コンピュータに精通していない人でも動かすことができるようにしたことによるものだと思われます。その時点のユーザ数の差が現在まで引きずられているのでしょう。

また、Windowsは最初からPCにプリインストールされているので、自然にWindowsユーザになってしまう、ということもあると思います。Linuxは自分でインストールしなければなりません。プリインストールされたOSを使うなら、残された選択肢はMacChromebookしかありません。

現時点ではLinuxにもCUIだけでなくGUIもあるので、その意味での差はありません。 また、両者で使えるソフトウェアの質に差があるということもありません。 もちろん、Windowsでしか動かないソフトはありますが、逆にLinuxでなければ動かないソフトもあります。

両者の最大の違いは、Windowsプロプライエタリつまり商用であり、Linuxはオープン・ソースであるということです。 これが両者の決定的な違いです。このことが2つの大きな違いを生むことになります。

第1は、有料と無料という違いです。Windowsはパソコンに同梱されているので、有料であることが見えにくいのですが、 実は15,000円前後します(Windows 11 Home 64bit 日本語 DSP版の場合)。 有料であるということは、特にネットワークを作るときに問題になります。 サーバー自体の料金以外にクライアントPCもそれぞれライセンスが必要になるからです。 それに対してLinuxは無料で、ネットワークを組むにもお金はかかりません。 もちろん、サーバー管理の委託費用、あるいは自社管理の場合の人件費は必要ですが、それはWindowsでも同じことです。

費用のことが理由でWindowsからLinuxに変えたのが、ドイツのミュンヘン市です。 これは2003年のできごとで、同市の1万4000台のコンピュータのWindows-OSの更新費用があまりに大きいということで全PCをLinuxに変える方針を打ち出しました。 実際には一部Windowsが残ったようです。 ところが、ミュンヘン市は最近の市議会でWindows10に回帰することを決定しました。 2つの互換性のないOSを使うことは効率的でないという理由だそうです。

第2はコンピュータのユーザ層の違いです。 Windowsは商用で、顧客となる対象は一般の人です。 特にコンピュータに精通していることは想定されていません。 そして、オフィスやエッジなどのソフトは一般の人が仕事や普段の生活で使うことを想定しています。 開発用のソフトもありますが、それがメインのターゲットではないということです。

それに対して、LinuxではWindowsのアプリケーションのようなものに加え、研究用、開発用のものが多いのです。 C、RubyPythonなどのプログラミング言語は標準で含まれています。 ネットワーク・サーバを構築するためのソフトも標準で含まれています。 その他、コンピュータの研究、開発をするありとあらゆるソフトが含まれているのです。 したがって、ソフトウェアの開発者、研究者が自分のやりたいことを何でもやれる環境がLinux環境なのです。 私はLinux派ですが、その理由はここにあります。

これは、そもそもLinuxがオープン・ソースであるということに由来します。 オープン・ソースは、著作権特許権によってソフトウェアの開発に制限がかかることを防ぎ、ソフトウェアが発展できるようにするのが目的で生まれました。 ですから、「オープン・ソース=研究、開発のためのソフトウェアのあり方」が基本なので、Linuxは自然に研究、開発向きのディストリビューションになっていくわけです。

また、このことからLinuxを構成するライブラリやアプリケーションは開発中のものが多いといえます。 これは、未完成というわけではありません。 しかし、ソフトウェアは一旦完成品ができても、常にバージョンアップが図られる、その意味で「開発中」のものがほとんどです。 そのため、不安定な部分がLinuxにはあります。 例えば、最近、ディスプレイを管理するライブラリがX.orgからWaylandに変わりました。 しかし、多くのアプリケーションがWayland未対応な状況です。 最新のUbuntuである22.04でも、一部で動作しないアプリがありました。 以前書いたibusとmozcの不具合は、これが原因ではないかと思っています(原因未確認ですが)。 Linuxユーザには一定の自己解決能力が必要です。

これに対してWindowsはライブラリからアプリケーションまでマイクロソフトが一元管理していますから、ライブラリ未対応で不具合が発生するということはありません。 このような安定性はユーザにとってはありがたいことです。

以上、WindowsLinuxの違いについての自分の見方を書きました。 結論としては、Windowsと比べて「Linuxは研究・開発向き」ということです。